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何気なく暮らしている日々の中にある『アート』を紹介していくブログ。
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池袋 新文芸坐『日本映画の旗手たち Vol.15 吉田大八ワンマンショー』

というイベントに行ってきた。
吉田大八監督&佐藤貴博プロデューサーによるトークショーの後、
『桐島、部活やめるってよ』
『パーマネント野ばら』
『クヒオ大佐』
『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』
吉田監督の過去作品4本をオールナイトで観る、というイベントである。
最新作から順々に過去作を観ていく。

トークショーで吉田監督あるいは佐藤プロデューサーも指摘していたが、
吉田監督の一貫性や癖が作品内にでている。
画へのこだわりで映画監督が誰かわかることは多いが、物語の構成で
一貫性を感じる監督は珍しい気がする。

ひとつは(これは監督が言っていたことの要約だが)、最初はゆったりと
日常が描かれ、終盤にぐちゃぐちゃになる。
吉田監督の作品を観たことがある人であれば、「あぁ確かに」と思うはずだ。

そしてもうひとつが、答えを観客に委ねるような手法だ。
これに関しては色々と僕の中で考えることがあった。
『そういうやり方』という点について僕は最近、疑問派であったのだ。
いわゆる投げっぱなしジャーマンのようなやり方は観客に対しては
親切でない。と思い始めたのは最近である。
もちろんそういった形の作品が好きな人たちがいるのは知っているし、
エヴァのように、作品外で観客によって完成されるような作品もある。
というと、色々な人から反発がありそうで怖いが、もともと僕も
そういった作品が好き派であったので、まぁ答えとしては、
疑問であるなら自分の作品でやらなければ良い、というだけだ。
などと、半分、吉田監督の作品を評価していた訳である。
吉田監督の作品はギリギリのラインである、と。
しかし、そうではなかった。
作品中にほぼ明確な答えが散りばめられていたのだ。
これは驚きだった。疑問が一気に解消されたような気がした。
それでも、1回では、あるいはかなりの集中力がないと理解しづらい、
というのはいかがなものか、という問題は僕の今後の課題にしよう。

そして、一番面白いのが、妄想や想像が可視化される、ということだ。
映像ならではの表現だと思う。言葉でなんとなく説明するとすれば、
現実では起こっていない想像が登場人物には見えている状態になる。
ものすごく簡単に言えば幻覚である。
登場人物の幻覚が映像を通して僕らにも見える、そんな映像表現。
4本の作品、物語自体は全然違う空気にも関わらず、この状況は
毎回描かれる。
ある種この表現によって吉田監督の作品の異質さみたいなものがわかる。
これについて監督は、こんな素晴らしい言葉で表現した。

  —— キチガイが世界に勝つ瞬間がある。

(作品中において)現実的な状況下で登場人物たちが、その現実の世界に勝る瞬間。
現実は何ひとつ変わらないながらも、彼らの想像が世界を超える瞬間。
ある意味これは悲しい瞬間でもある。なんせ、現実は何も変わらないのだから。
しかしそれは他人から見た視点であって、登場人物たちには関係ないのだ。
そして吉田監督は、それを肯定も否定もしていないように思う。
問題を抱えた彼らに対して、ただ暖かい目で見ている、そんな感じ。
そういった吉田監督の、作品を包み込むような手によって、
登場人物たちは最後まで壊れずにいる。
作品によっては、ギリギリの所にいる登場人物であっても、だ。
それが、面白い。
僕たちも、そうであるのかもしれない。
心の中で狂気と正気の間を行ったり来たりしながら、現実世界を生きる。
妄想の中で舞い上がったり、矛盾を感じて落ち込んだりしながら、
それでもちゃんと生きている。
つまらない、と毎日愚痴をこぼしながら生きるくらいなら、
たまには、全身で素敵な妄想の中に飛び込んで、世界に高々と勝利宣言しても
いいんじゃないだろうか。
それは多分、現実と繋がっているのだから。

ということで、オールナイトにも関わらず、コンディション作りに失敗して
「寝るだろう」宣言をしながら会場に行き、最初の作品を観終わった後に、
まだ3作品あることに絶望したりもしながらも、無事生還することができた
今回の僕にとって初オールナイト映画館イベント。
22:00に始まり解放されたのは6:30である。なかなかハードだった。
もし映画を4本連続で観るとしても普段だったらジャンルは変えるだろう。
けれど、あんな濃い作品群を連続で観るのも悪くないなぁ、と。
そんな風に思えたイベントだった。
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自分や友人の周辺で起こる日々のアートに注目。
面白いこと、紹介していきます。
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